5月25日午前、癌のため亡くなったそうです。
角川春樹事務所の方のtwitterが第一報だったでしょうか。
誤報では無いのか、という希望を打ち砕くように、榊一郎氏や浅井ラボ氏からの続報が続きました。
個人的に非常に好きな作家さんだったので、知った後は仕事にも身が入らず、帰宅してこのエントリを書いている次第です。
世間には「寧々さんのシナリオ担当」という書き方で広まっていますが、正直なところ、それでは悔しい。
なのでここで、自分の好きな大迫純一氏について色々と、書き連ねてみたいと思います。
最初に大迫作品を知ったのは、実はホビージャパン経由で、青心社文庫の『魔法探偵まぁリン』に登場するキャラクター“ミリ”のガレージキットの作例だったと記憶しています。
「どうしてこの人、小説家なのにガレキ作ってんだ?」と。
- 作者: 大迫純一
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そのような経緯で気になって、『まぁリン』の次に触れたのが、大迫純一の真骨頂と言える『ゾアハンター』でした。
- 作者: 大迫純一
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『ゾアハンター』はハルキノベルスで始まり、一冊だけハルキ文庫ヌーヴェルSFシリーズで出版されつつ、5巻で中断したシリーズです。
それまで読んだことのない暑苦しい文体。
SFというより特撮小説と読んだ方が相応しい、生々しい描写。
何もかもを受け止めるダークヒーロー。
作品の持つ熱量に圧倒されました。
黒川丈という人物の持つ真っ直ぐさに、胸を打たれました。
本格的に大迫作品にはまったのはこの頃で、『超鋼威ガクテッカー』や『魍獣妖拳伝』だけではなく、漫画家時代の作品『魔諭羅』や掲載誌(と言ってもA5単行本仕様)『ハイパーゾーン』まで買い集めました。
その後ゲームの『最終電車』(まぁリンとのリンクあり)まで探し出したくらいですから、我ながら入れ込みすぎです。
- 作者: 大迫純一
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しかし『ゾアハンター』が中断して以降、大迫作品に触れる機会は一気に少なくなりました。
富士見ミステリー文庫、MF文庫J、HJ文庫時代は発行ペースも遅く、「小説家としての大迫純一」がどうなるのか、読者として不安になっていた時期もありました。
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黒き魔像の契約者―ディストラクター13〈1〉 (富士見ミステリー文庫)
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その不遇の時代を経て『神曲奏界ポリフォニカ ブラックシリーズ』でイラストレーターのBUNBUN氏の力も得て一気にメジャーになった時は、大迫純一の新作が待たずに読めるようになったことに、大喜びしたものです。
神曲奏界ポリフォニカ インスペクター・ブラック (GA文庫)
- 作者: 大迫純一,BUNBUN
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『ポリ黒』の勢いに乗って『ゾアハンター』も奇跡の復活を果たし、大幅なリライトの末、全7巻で見事完結。
ブラックのスピンオフ『レオン・ザ・レザレクター』も4巻で完結し、新シリーズ『レオン・ザ・ゴールド』として再開。
小説家としての大迫純一氏は、GA文庫という場を得て乗りに乗っている、と、そう思っていました。
しかしポリ黒の最終刊『アドヴェント・ブラック』を入稿した直後の39日間に及ぶ緊急入院が、今になって思えば「終わりの始まり」だったのでしょう。
今日、訃報を知るまで、療養を経て復帰されるのだと信じていました。
が、しかし、病魔の力は強大でした。
今になって思えば、5月8日の更新での「でも、ちゃんと生きてます。」という言葉が空しく響きます。
でもそれは大迫先生の本心だったのだと、信じられます。
熱いを通り越して暑苦しい文体が好きでした。
それでいて緻密な設定が好きでした。
そして、それらを勢いで押し通す作劇、感情の流れのはっきりとした作風が好きでした。
絶対に他の人では描き出せない世界観を持った、希有な作家だった思います。
他の誰にも「マナガもマティアも描けない」と、そう断言できます。
マナガリアスティノークル・ラグ・エデュライケリアスは描けても、です。
ラノベ界は、小説界は貴重な作家を失いました。
急逝に際しての救いは、『ポリ黒』と『ゾアハンター』が完結したことでしょうか。
…いや、大迫先生なら、完結させるまでは気合いで癌なんかなんとかしてしまうに違いない。
まだ完結しなければ良かったのに。
どうしても1ファンとして、そのように考えてしまいます。
それくらい、エネルギーに満ちた方であったと、一読者である自分でも感じます。
作品を通して、どれくらいの力をもらったことか。
もう大迫純一の新作は読めないのだと思うと、やるせない気持ちになります。
同時に、受け取った力を、何らかの形で活かしていかなければ、とも。
大迫先生は亡くなりましたが、その作品に触れることは今からでも出来ます。
興味を持った方は是非、『神曲奏界ポリフォニカ』を『ゾアハンター』を、手に取ってみてください。
失望は、させません。
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神曲奏界ポリフォニカ ザ・ブラック1 (Flex Comix)
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大迫純一先生のご冥福を、心よりお祈りします。
そしてhurting heartを、いつまでもリピート。